日本動物行動学会 2024年度アンバサダー報告書
兵庫県立人と自然の博物館 研究員 太田菜央
兵庫県立人と自然の博物館研究員の太田です。鳥類のコミュニケーション行動について研究しています。私は2024年9月29日から10月4日にかけて、オーストラリアのメルボルンで開催されたISBE2024(International Society for Behavioral Ecology Congress 2024)に参加してきました。今回、日本動物行動学会の国際交流アンバサダー事業の一環で旅費の補助を頂き、ポスター発表と合わせてJournal of Ethologyの広報活動を行ってきました。
結論として、私はこのアンバサダー事業を引き受けてとても良かったと感じています。ここから事業の概要と取り組みについて、私の感想を交えながら述べていきます。事業の主目的はJournal of Ethologyの国際的な認知度と投稿数を上げることです。JEに投稿するメリット(Editor’s choice制度やYouTube動画による解説など)や、新設されたVideo Insightsという投稿カテゴリについて、学会が準備したチラシを配りながら学会参加者に宣伝します。私は特に配布場所ややり方に決まりを作らず、交流する機会があった皆さんに(無理のないタイミングを見計らって)話題として出すようにしました。休憩中やバンケットの際だけでなく、ポスター発表中もチラシに興味を持ってくれた人には話すようにしました。こう書くと宣伝ばかりで忙しそうだと思われるかもしれませんが、基本的に詳しいことはチラシに書いてあり、私は主要な情報を提供すれば良いので研究の話ができない、ということはありませんでした。むしろ初めて話す人との会話のネタになるなど、あまり社交的な性分でない私には都合が良い面もありました。
今回チラシを渡した人は私がドイツで働いていた時の職場の同僚や、以前学会やワークショップで話したことのある研究者など知り合いが多かったですが、ポスターを聞きにきてくれた人やこの学会で新しく知り合った人にも宣伝を行っています。私と研究の関心が近い人が多いので、鳥やそのコミュニケーション行動について研究している人が多く、JEにとって比較的新しい層の人々にリーチできたのではないかと思っています。話した時の感触は概ね良く、投稿について前向きに考えてくれると言ってくださる方が多かったです。特にVideo Insightsについては新しい取り組みとして関心を持ってもらえたようでした。今回偶然再会した知り合いのとある教授は、昔JEに論文を投稿したことがあり、最近は学生の研究ネタが随分溜まっているのでぜひ投稿したいと言ってくれました。
初めてのオーストラリア渡航、かつ、久しぶりの大規模な国際会議への参加でしたが、自身の研究発表もアンバサダー活動も充実した楽しい学会となりました。私事になりますが、ドイツから日本に拠点を移した直後でそれほど大きな研究費を抱えていない私にとって、アンバサダー事業で旅費を支援して頂けたことはとてもありがたかったです。様々な人と研究の話ができて今後のモチベーションも上がりました。
最後に、この体験記では今後のアンバサダー事業に関する意見も述べるよう依頼されているのですが、JEの広報という観点からは、多様な立場、専門の方が引き受けることで投稿者の裾野が大きく広がりそうだと感じました。色々な方が色々な方法で宣伝していくことを想像すると、今後の展開がとても楽しみな事業です。JEの発展にも大きく貢献することと思います。トレンドのトピックを研究している方も独自路線を極めている方も、人と話すのが好きな方も苦手な方も、ぜひアンバサダーに挑戦してみてはいかがでしょうか。