日本動物行動学会は1982年に、日高敏隆京都大学理学部教授(当時)を初代会長として設立されました。ノーベル賞を受賞したローレンツやティンバーゲンが発展させたエソロジーの伝統を踏まえつつ、行動生態学、生理学、動物社会学、心理学、遺伝学、進化学、数理生物学など、動物の行動に関するあらゆる分野に開かれた学会です。対象となる「動物」も、虫、鳥、魚や、ヒトを含む哺乳類はもちろんのこと、パソコンにすむ人工生命まで含まれます。学会大会を年1回開催しています。工夫をこらしたポスター発表を中心に、口頭発表、ビデオ発表、ラウンドテーブル、シンポジウムなどで、活発な討論が繰り広げられています。学会誌(英文学術雑誌)として、『Journal of Ethology』を年3回発行しています。この学会誌は2000年からはSpringer-Verlag社から出版されることになりましたが、編集はこれまで通り学会の編集委員会が行ないます。このほか、会員への通信として『Mailnews』を随時発行しています。世界のトップレベルの研究を推進していますが、若い会員が多く、動物の行動に興味のある方なら誰でも楽しめる、格式張らない学会です。


学会誌 Journal of Ethology では
エディターズチョイス論文の紹介ビデオを作っています。

ナレーション:音読さん(ondoku3.com
ナレーション:音読さん(ondoku3.com

News

  • 行動生物学研究会 第55回オンライン講演会

    日本動物行動学会の皆様

    行動生物学研究会の西海と申します。
    12月の講演についてご案内差し上げます。
    皆様のご参加をお待ちしております。

    —行動生物学研究会 第55回オンライン講演会—
    日時:2025年12月18日(木) 16:00-17:00
    演者:岩田 容子(東京大学大気海洋研究所・准教授)
    「いかように生きるか?イカ類の代替繁殖戦術に伴う生活史戦略」
    場所:zoomによるオンライン配信(質問可)
    研究交流会:20:00-21:00
    参加費:無料

    講演要旨:
    多くの動物群において見られる顕著な雄の多型は、個体がとる代替繁殖戦術と密接に関係しています。各個体がどのような繁殖戦術をとるか、という意思決定には、個体の集団内における競争能力(status)や、個体群密度や実効性比に伴う繁殖機会をめぐる競争の激しさが強く影響します。沿岸性のヤリイカ類に見られる代替繁殖戦術は、戦術によって交接行動や精子の受け渡し場所、さらには受け渡された精子が雌の体内に貯精される状況や期間が全く異なるという珍しい特徴を持っています。本発表ではこれまでに行なってきたイカ類の特殊な繁殖様式に関する行動学的・形態学的研究と、季節的・地域的な実効性比の偏りが代替繁殖戦術の決定にどのように影響するのかという生態学的研究について紹介したいと思います。

    参加方法:登録フォームから登録を行ってください。
    ※一度登録すれば、以後の講演会の案内も届く設定です。

    お問い合わせ先:
    ・参加登録やzoom接続に関して
    E-mail : behavioral.biology.official@gmail.com

    ・運営に関して
    西海 望 (にしうみ のぞみ)
    行動生物学研究会代表
    〒950-2102 新潟県新潟市西区五十嵐2の町8050
    新潟大学 創生学部/大学院自然科学研究科
    Tel: 025-262-7684
    E-mail : nishiumi@create.niigata-u.ac.jp
    : n.oz.o@hotmail.co.jp

    公式サイト

  • 2025年度の学会賞及びEditor’s Choice Awardについて

    第44回 日本動物行動学会 総会(2025年11月23日(日)10:00〜11:00)において学会賞及びEditor’s Choice Awardの表彰式がありました。

    日本動物行動学会賞は区分(2) 動物の行動に関する新たな理論の構築あるいは既存の理論の発展において
     安部 淳氏 (神奈川大学 理学部)
     「性⽐と⾎縁選択に関する統合理論の構築と寄⽣蜂の性⽐調節を⽤いた実証」
    が選ばれました。

    中田会長(左)と安部氏(右)

    Editor's Choice Award 2025 Articleとしては
    Leg-biting fights reduce the number of sperm transferred by the loser and in draws in Zophobas atratus. By Teruhisa Matsuura & Takahisa Miyatake (Volume 43, Issue 3, pp 193-200)https://doi.org/10.1007/s10164-025-00850-y
    が選ばれました。

    左から竹垣編集長、松浦氏、宮竹氏

    またEditor's Choice 2025 Articlesとして以下の6本が選ばれ、OA化されています。

    • Vole hunting: novel predatory and carnivorous behavior by California ground squirrels. By Jennifer E. Smith, Joey E. Ingbretson, Mackenzie M. Miner, Ella C. Oestreicher, Mari L. Podas, Tia A. Ravara, Lupin M. L. Teles, Jada C. Wahl, Lucy M. Todd & Sonja Wild (Volume 43, Issue 1, pp 3-12)
      https://doi.org/10.1007/s10164-024-00832-6
    • A theory of spawning habitat selection in anurans. By Minoru Goto, Hiroshi Ikeda, Gaku Takimoto (Volume 43, Issue 1, pp 13-20)
      https://doi.org/10.1007/s10164-024-00824-6
    • Squirting ink may play a role in the copulation of the pygmy squid. By Noriyosi Sato, Ryohei Tanabe, Wen-Sung Chung, Mizuki Yamada, Arata Nakayama & Yoko Iwata (Volume 43, Issue 2, pp 53-56)
      https://doi.org/10.1007/s10164-024-00829-1
    • Symbiotic cleaning relationship between a sailfish (Istiophorus platypterus) and remoras (Remora osteochir). By Toshiaki Mori, Kenichi Fujii, Kaori Fujii, Akira Komoda & Takuzo Abe (Volume 43, Issue 2, pp 63-68)
      https://doi.org/10.1007/s10164-025-00852-w
    • Effects of reproductive status and experience on sexual motivation and mate preference in female guppies. By Ryudai Yamada & Kenji Karino (Volume 43, Issue 2, pp 129-136)
      https://doi.org/10.1007/s10164-025-00851-x
    • Female-mimicking spawning by subordinate males of the coral-dwelling damselfish Dascyllus reticulatus—a possible sneaking tactic observed in wild groups. By Rei Sakanoue & Yoichi Sakai (Volume 43, Issue 3, pp 153-164)
      https://doi.org/10.1007/s10164-025-00862-8
  • 2026年度の動物行動学会大会について

    2026年度の動物行動学会大会は同志社大学 今出川キャンパスにおいて9/19(土)、9/20(日)、9/21(月・祝)の3日間での開催され、懇親会は9/20(日)夜に予定されています。

    実行委員(敬称略)
     飛龍 志津子(委員長)
     小林 耕太
     阿部 真人

    どうぞよろしくお願いします。

  • 動物行動研究のためのガイドライン

    日本動物行動学会に動物行動研究倫理委員会を置く。会員は委員会の定めるガイドラインに準拠して研究を行わなければならない。

    1.目的

     行動学研究は,動物行動の進化,適応,メカニズム,そして発達についての理解を深める重要な意味を持っている。これらの研究は,野外および飼育下においてなされ,手法としては,非侵襲的(注1)な行動観察以外にさまざまな実験的負荷処置を動物に加える方法を選ばなければならない場合もある。また,非侵襲的な行動観察を行なう場合にも野生動物に接近し,捕獲することでその行動や生理的状態等に影響を及ぼす可能性がある。科学的研究の重要性を踏まえた上で,研究者は研究によって動物や生態系に与える可能性のある負の影響を考慮し,これを最小限にとどめる努力をする必要がある。本ガイドラインは行動学研究において考慮すべき事項を示し,科学的研究だけでなく動物倫理的観点からも適正な動物行動研究の実施を促すことを目的とする。
    (注1) 侵襲的とは,機能を不可逆的に損なうことを指す。

    2.関連する法律等

     研究者は,研究実施に際し関連する法律や,所属機関の定めるガイドラインに準拠して研究を行わなければならない。

    3.適用対象動物

     研究に用いるすべての動物(脊椎動物および無脊椎動物)とする。

    4.研究計画の立案

     研究者は,科学的研究計画を立案する際,これに適正な研究対象動物を選択し,研究方法の検討をする必要がある。飼育を要する研究計画の場合には,必要な飼育条件の確保を図る必要がある。また,研究対象となる動物群の専門家などの助言を求めることが望ましい。無脊椎動物は動物の科学的研究に関する法律の対象とならないことが多いが,これらの動物を研究対象とする場合にも,苦痛やストレスの兆候を考慮してこれを最小限とした研究計画をたてる努力をすることが望ましい。

    5.動物の個体数

     研究者は,研究目的を達成するのに最小限の動物個体数を使用するべきである。

    6.動物の入手

     研究用動物は,適正な業者や研究機関などから入手する必要がある。野生動物を野外で捕獲する場合には,生態系に与える影響を最低限とし,なるべく苦痛のないように捕獲を行なう必要がある。

    7.動物の飼育管理

     飼育管理をともなう研究を行なう場合,研究者は研究対象となる動物種の行動特性を配慮し,適正な飼育環境で動物を飼育する必要がある。野生動物を研究用に飼育する場合には飼育環境条件に特に注意してなるべくストレスの少ない飼育環境条件となるよう考慮することが望ましい。

    8.研究方法

    • 研究に当たっては,研究対象動物に与える苦痛の大きさと時間が最小限であるようにするべきである。実験的処置を施す際には日常の訓練や順化措置と適正な麻酔等を用いて苦痛の軽減を行なうことが望ましい。
    • 研究者は,研究の対象動物の扱いを十分習熟する必要がある。
    • 野外研究においては,捕獲,マーキング,テレメトリーシステムの装着,採血や組織採取などによって動物に与える負の影響をなるべく軽減することが望ましい。
    • 異種あるいは同種間の攻撃行動を実験的に研究する際には,研究の目的にもよるが,攻撃を受けた個体用の逃走路確保や保護用柵の設置などによって攻撃を受けることによる被攻撃対象動物の死傷をなるべく減ずるようにすることが望ましい。
    • 嫌悪刺激や飢餓条件は,動物の健康状態に十分注意し,研究目的に沿う範囲で必要以上に強い刺激や飢餓条件とならないようにする必要がある。
    • 隔離と過密飼育は,研究目的に沿う範囲で必要以上に長期間課することのないように注意することが望ましい。
    • 病原体や寄生虫に人為的に感染させる処置を研究に適用する際は,動物の状態をなるべく頻繁に観察し,健康状態の悪化が観察された場合には適宜適切な治療処置や時にはできるだけ苦痛を与えないような方法で殺処分を行なうことが望ましい。また,物理的化学的材料あるいは病原体を扱う実験においては,人の安全の確保と飼育環境の汚染により研究対象外の動物が障害を受けることのないよう十分に配慮しなければならない。実験施設周囲の汚染防止にも注意を払う必要がある。

    9.研究終了時の処置

     研究終了時には,(1)野外観察を行った場合には,対象動物および環境に施した操作は,すみやかに可能な限りこれを復帰し,(2)野生動物を捕獲し飼育して研究に用いた場合には,法律上可能であれば,他の研究者に譲渡して他の研究や繁殖に用いる方法や,(3)放逐によってその動物およびその地域に生息する生物,および生態系に悪影響がなければ捕獲した場所に放すことも検討すべきであり,(4)研究対象動物の殺処分を行なう必要がある場合には,できるだけ苦痛のない方法でこれを行うことが必要である。


    *このガイドラインは2003年1月1日より施行する。

    PDF版/PDF English version

  • 行動生物学研究会 第54回オンライン講演会 「植物の季節適応戦略」

    日本動物行動学会の皆様

    行動生物学研究会の西海と申します。
    11月の講演についてご案内差し上げます。
    皆様のご参加をお待ちしております。

    —行動生物学研究会 第54回オンライン講演会—
    日時:2025年11月13日(木) 16:00-17:00
    演者:佐竹 暁子(九州大学大学院理学研究院・教授)
    「植物の季節適応戦略」
    場所:zoomによるオンライン配信(質問可)
    研究交流会:20:00-21:00
    参加費:無料

    講演要旨:
    有性生殖を行う生物では、受精は新しい生命個体の始まりです。受粉・交尾後に速やかに受精がなされる種がいる一方で、受精まで長い時間をかける種が多岐にわたる分類群で報告されています。森林生態系の中核をなすブナ科樹木はその典型であり、受粉から受精まで1年も遅延することが知られています。どうしてこのような長い遅延が進化したのでしょうか?本講演では、数百種を対象にしたデータ収集から進化モデルの分析、大学院生と進めている花粉管伸長や胚珠発達の観察、雌花トランスクリプトームによって明らかとなってきた研究成果を紹介し、受精遅延が果実形成にどのように関与しているのか、そしてこの現象が冬を乗り越えるための繁殖戦略として機能している可能性について議論したいと思います。

    参加方法:以下の登録フォームから登録を行ってください。
    https://forms.gle/tYDd4AKFtMgNpFex9
    ※一度登録すれば、以後の講演会の案内も届く設定です。

    お問い合わせ先:
    ・参加登録やzoom接続に関して
    E-mail : behavioral.biology.official@gmail.com

    ・運営に関して
    西海 望 (にしうみ のぞみ)
    行動生物学研究会代表
    〒950-2102 新潟県新潟市西区五十嵐2の町8050
    新潟大学 創生学部/大学院自然科学研究科
    Tel: 025-262-7684
    E-mail : nishiumi@create.niigata-u.ac.jp
    : n.oz.o@hotmail.co.jp

    ・公式サイト
    https://sites.google.com/view/behavioral-biology/home